この度、『葬祭業界で働く』(ぺりかん社)という本を執筆させていただきました(葬送ライターの柿ノ木坂ケイさんとの共著)。
葬祭関連業界で働きたいと考える学生向けのガイドブックとして企画された書籍です。葬儀社だけでなく、葬祭業周辺の業界を網羅したものにしようと、葬儀社、湯灌師・納棺師、エンバーマー、生花店、葬儀司会者、仏壇店、石材店、霊園、そして、僧侶と、幅広い業界の事情についても解説させていただきました。
また、それぞれの仕事をしている現場担当者にインタビューを行い、仕事をしていての苦労ややり甲斐についても、語っていただきました。
本が仕上がり、あらためて読み返してみたのですが、インタビューをさせていただいた人の発言に共通点があることに気付きました。それはみな、この仕事のやり甲斐はお客さまに感謝されることだということを、申し合わせたように語っているということです。
葬祭業界すべての仕事に言えることですが、顧客は基本的に、大切な家族を亡くし、悲しみに暮れている人です。そして、葬儀という慣れない儀式を進めていかねばならず、その点でも不安をかかえています。動揺のあまり、きちんとした会話のできない人すらいるわけです。
その中で、葬儀という儀式を滞り無く進めていくためには、まずは信頼を得るために、コミュニケーションを深めていくことが大切です。次いで、プロとして、いい葬儀をつくりあげていくため、的確なアドバイスをすることが必要です。こうして、時間をかけて一緒に創りあげていくというのが葬儀の仕事です。
逆に言えば、遺族にとって一番頼りになるのは、葬儀社のスタッフです。それに応え、一緒に考え、寄り添ってくれたスタッフには、自然と感謝の言葉が出てしまうのでしょう。
もちろん、今回、インタビューを受けて頂いた方々が、たまたま、とてもいい仕事をしている方ばかりだったということもあると思います。だからこそ、顧客に感謝されるという経験を数多くしているのだと思います。
ただ取材を通して感じたのは、世間が葬儀社に対して感じているイメージとの違いです。マスコミなどの報道もあり、葬儀社にいいイメージを持っていない人は決して少なくありません。
しかし現実はどうでしょう? 遺族に寄り添おうとする姿勢などは、インタビューさせていただいた全ての人からにじみ出ていました。そして実際に、不安をすこしでも無くしていくために、いろんな気づかいをしながら、相当に長い時間を遺族と過ごしています。正直、ここまでされたら、お寺は勝てないと感じました。
ひとつ言えることは、お寺が葬儀社から学ぶことができることも少なくないということです。仏教界には、葬儀社に批判的な人が多いですが、誤解がそうした意識を生んでいることも多々あるようです(もちろん、ひどい葬儀社もあるのも事実です)。
これからの時代、お寺は、もっと葬儀社と情報交換をしていくべきだと思います。そして、葬儀社と協力し合って、どう遺族に寄り添っていくかを考えていくことで、さらなる安らぎを人々に与えていけるのだと思います。