永代供養墓が注目される理由のひとつとして、子どものいない人が増えているということがあります。
子どもがいないゆえ、自分が死んだら、自分の遺骨はどうなるのか、自分は供養してもらえるのか、という不安を解消する方法のひとつとして、永代供養墓が求める人が多いということです。
しかしそこで、解決されない問題がひとつ残ることを忘れてはなりません。子どものいない人が亡くなったら、そもそも喪主がいない可能性が高く、その場合は葬儀をしてもらず、同時に、遺骨も行政が火葬して、自治体の合祀墓に納骨されてしまう可能性があるということです。
最近もお寺からこんな相談がありました。
「檀家のおばあさんが、『自分が死んだら、葬式をして欲しい』と言ってお金を持ってきました。
おばあさんは子どもがいないので、このままだと自分は葬式をしてもらえないんじゃないかと不安になってお寺に来たようです。どうにかしてあげたいのですが、どのように対応したらいいでしょうか」
お寺の立場としては、「わかりました、まかせてください」と快く受ければいいという考える方も多いと思います。しかしことはそんなに簡単ではありません。忘れてはならないことは、お金を預かるということです。それも一万や二万のお金じゃありません。
何十万というお金です。
あらぬ疑いをかけられないようにしなければならないですし、このお金に関して不安をあたえてはなりません。法的なことをきちんとしておくことが大切なのです。
またこのおばあさんの言っている「葬式」は、僧侶が導師をつとめるということだけでなく、火葬から葬式の施行まで、つまり葬儀社が行う部分も含まれているはずです。喪主になる人がいないから、困ってお寺に来たわけですから。
だから、お布施の部分以外に、葬儀に関して、どのくらい実費がかかるのかの見積もりも必要だし、物価の上昇などもある程度は想定する必要もあるでしょう。
そして何よりも大切なのは、そのおばあちゃんが亡くなったら、間違い無くお寺に連絡が来るようにしておくということです。
家族のいない人が亡くなったら、身元引受人がいないと言うことで、行政や施設の責任者が遺体を火葬し、他の共同墓地に納骨してしまう可能性があります。
そうすると、故人の意向がまったく実現されないということになってしまうのです。
そうならないようにするためには、契約を結んだことを、身近な人に知っていてもらうことが重要となります。親類がいれば親類、あるいは近しい友人、施設で暮らしているのなら施設の担当者など、亡くなってスグに連絡が入りそうな人たちに、この契約のことを知ってもらうのです。
これからの時代、このおばあちゃんのような人がたくさん出てくる可能性があります。そして誰かがが、こうして喪主の代わりをし、葬儀をあげてあげる、ということをしてあげなくてはならないのです。私は、これをお寺が行うのが相応しいと思っています。
今後、お寺がこうしたサポートをすることができるための仕組みの整備が求められているのです。
これは弔い委任(死後事務委任)というシステムです。この点については、また詳しくお伝えしたいと思います。