今秋、弊社(寺院デザイン)では、「葬式仏教価値向上委員会」という研究会を始めます。
この研究会は、文字通り「葬式仏教」の「価値」を「向上」させることを目指します。そして、この「価値向上」には二つの意味があります。
「葬式仏教」は、どうも現代社会においては、あまり評判がよくありません。しかし日本の仏教が葬式仏教となったことには意味があり、葬式仏教がこれまで、私たち日本人を死への不安から救うという大きな役割を果たし続けてきたのも事実です。こうした葬式仏教の価値を、広く一般の人に知ってもらいたい、というのが「価値向上」がひとつ目の意味です。
とはいえ一方では、葬式仏教自体が、変化する現代社会について行けていないという現実もあります。一般の人々の意識が離れていくことは、葬式仏教の衰退につながることであり、ひいては仏教の未来にも影響しかねない問題です。だからこそ、現状の葬式仏教そのものの「価値」が高まるよう、変えるべきところは変えていかなくてはなりません。こうした意味での「価値向上」がもうひとつの意味です。
そもそも「葬式仏教」という言葉が、いい使われ方をされることはほとんどありません。一般の人たちはもちろん、僧侶の方々でも、仏教が葬式仏教であることに、いかんともしがたい葛藤を感じている方が多いようです。
たしかに、お釈迦さまが説いた仏教、あるいは祖師方が説いた仏教に思いを寄せると、現代の仏教の姿があまりにもかけ離れていることは、歴然たる事実です。
しかしその一方で、仏教が葬式仏教化することで、たくさんの人が救われてきたのも事実です。「そもそも仏教とは」という視点も大切ですが、「葬式仏教が、人々に安心を与えてきた」という現実に目を向けることも大切だと思うのです。
問題なのは、現状の「葬式仏教のあり方」と社会が求めるものとの間に、ズレが大きくなってきていることです。仏教が、本来の力を発揮できないのは、このズレにあるのです。
しかもこのズレは、とても広い範囲にわたって生じています。お布施の問題、葬式や法事の意味、檀家と菩提寺の関係、家族のあり方、地域コミュニティのあり方、供養意識など、挙げればきりのないほどです。
仏教がこれからの時代、本当に求められる存在であり続けられるかどうかは、こうしたズレをどれだけ埋めていけるかにかかっています。
今秋に始まる「葬式仏教価値向上委員会」は、葬式仏教に関わる各方面の専門家を講師として定例研究会に呼び、その話をもとに参加者が議論を交わすという研究会です。葬式仏教の再生無くして、仏教の再生はありません。この会を通して、本当の意味で人々に求められるお寺が増えていっていただければと思っています。
この「葬式仏教価値向上委員会」は、僧侶なら誰でも参加できます。参加資格は「これからの仏教を、葬式仏教から考えていきたい」という気持ちだけです。
また7月には、「葬式仏教価値向上委員会」について知っていただくためのプレ講座を行います。
ぜひご参加いただければと思います。